本の価格表示について調べてみた話
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先日の勤務先での、お客さんと僕の会話です。
お客さん「本を自費出版したいんだけど、カバーに値段が印刷してあるじゃない。あれってルールあるの?」
僕「気にしたことがなかったですね。ちょっと調べておきます。」
本のカバーや表紙に印刷してある価格です。
見てみると
『定価(本体〇〇〇円+税)』や『定価:本体〇〇〇円+税』
などと表示されています。
そういえば本の値段っていつから税抜きの表示*1になったのだろう?「定価」って表示しないといけないんだろうか?いろいろ気になったので調べてみました。
なぜ定価表示なのか
そもそもなんで価格が「定価」と表示されているかご存じでしょうか。
それは『再販売価格維持制度(再販制度)』っていうものがあるからです。
日本書籍出版協会のホームページには、以下のように説明されています。
著作物の再販制度(再販売価格維持制度)とは、出版社が書籍・雑誌の定価を決定し、小売書店等で定価販売ができる制度です。
再販制度は自由な価格競争が行われず消費者の利益を損なうため、日本では独占禁止法により原則禁止されていますが、書籍やCD、新聞など決まった品目については再販制度が適用されています。
再販制度では、メーカー(出版社)に価格の決定権があり、小売店で自由に価格を変更することができません。
なので、多くの本の価格表示は「定価」*2になっているんですね。
お店で勝手に値段を変えちゃだめなんだね!
なぜ再販制度が必要なのか?という問いに対しては、以下のような説明がありました。
出版物には一般商品と著しく異なる特性があります。
①個々の出版物が他にとってかわることのできない内容をもち、
②種類がきわめて多く(現在流通している書籍は約60万点)、
③新刊発行点数も膨大(新刊書籍だけで、年間約65、000点)、などです。
このような特性をもつ出版物を読者の皆さんにお届けする最良の方法は、書店での陳列販売です。
書店での立ち読み 風景に見られるように、出版物は読者が手に取って見てから購入されることが多いのはご存知のとおりです。
再販制度によって価格が安定しているからこそこうしたことが可能になるのです。
ちなみに電子書籍については、この再販制度は認められていません。
いつから税抜き表示になったのか。
税抜き表示になったのは1997年、消費税が3%から5%に増税となったことがきっかけです。
消費税率が変わるたびにカバーを刷り直したり、取り換えたりしてたら、めちゃくちゃ経費がかかりますよね。
実際1989年に初めて消費税が導入された時には、かなりの経費がかかったようです。
出版社においては、1社平均 3,623 万円(日本書籍出版協会調べ。全産業では 5 万円以下 55.9%、1,000 万円超 0.8%、大蔵省調べ)となり、経費等との兼合いから廃棄または絶版にせざるを得なかった専門書や小部数出版物が多数に上るという由々しき事態が起き、問題となりました。
出典:消費税の価格表示に関する要望書(PDF)
こういった経緯もあって、その後の消費税率の変更に対応するために、定価(本体〇〇〇円+税)っていう表記に変えたようです。
ただ総額表示も必要なので、本のスリップ(本に挟んであるやつです)に総額を記載するという折衷案で落ち着きました。
余談ですが、僕の手持ちの漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(こち亀)で、ジャンプコミックスがいつから表示が変わったのか調べてみました。
- 113巻:初版発行日1999年4月7日
- 114巻:初版発行日1999年6月8日
なので、ジャンプコミックスについては上記の期間中に表示が切り替わったことが推測されます。
最後に
調べてみると、本の価格表示が「定価」になっているのは、再販制度の適用で出版社に価格の決定権があるから。
税抜き表示になったのは刷り直しなど、莫大な経費がかかるから、でした。
電子書籍の普及や活字離れなどにより、近いうちに今の再販制度も見直しが迫られるかもしれません。紙の本、本屋さんが好きな僕としては、各出版社にも電子書籍と共存できる方向性を探っていってもらいたいです。
最後に、冒頭にあったお客さんの本の価格表示は『価格(本体〇〇円+税)』っていう表記にすることにしました。別に委託販売する訳でもなく、価格を縛る必要もないので。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。