『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』脇役の悲哀

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頭を抱える外国人男性

2013年に放映され、最終回の平均視聴率42.2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録した「半沢直樹」。

 

この半沢直樹の続編ドラマがいよいよスタート*1します。
ドラマの原作となるのは、池井戸潤さん作の半沢直樹シリーズ「ロスジェネの逆襲」と「銀翼のイカロス」。

小説版の半沢直樹シリーズは、脇役として登場する人物の心の動きなども詳しく描かれていて、僕が読むときに楽しみにしているひとつでもあります。

 

ドラマの前半部分の原作である「ロスジェネの逆襲」を久しぶりに読み返してみましたが、登場する脇役の中で僕が一番好きなキャラクターが、「郷田行成」という人物です。
作中では精神的に追い詰められたが故に、詐欺に近いかたちで企業の買収計画に加担してしまう、弱い人間として描かれています。

 

この小説の中では出世や保身のために他人を利用したり、蹴落としたりする登場人物が多く、読んでいて腹立ってくるのですが、この郷田に限っては、素直に自分の非を認めて謝ったり、妙なところでスジを通したりという人間臭いところがあるので嫌いになれません。

 

今回は脇役である郷田行成にスポットを当て、「ロスジェネの逆襲」を紹介させていただきます。

 

※以下ネタバレを含みます

 

ホワイトナイトとして登場

物語は、東京中央銀行の子会社の東京セントラル証券に、新興IT企業の電脳雑伎団の社長である平山が訪ねてくるところから始まります。

 

平山は同じ新興IT企業の東京スパイラルを買収したいと相談をもちかけ、東京セントラル証券もアドバイザーチームを編成しますが、東京中央銀行にアドバイザー契約を横取りされてしまいます。

 

一方、東京スパイラルの社長の瀬名が、敵対的買収に対抗して太洋証券からホワイトナイト(友好的に買収または合併する会社のこと)として紹介されたのが、パソコンと周辺機器販売大手フォックスの社長、郷田行成でした。

ロスジェネの逆襲相関図1

この時点での瀬名から見た郷田の印象は、

堅実そのものの人柄はまさに敬服すべきものがある。

引用:ロスジェネの逆襲 本文より

というものでした。

 

弱さ故に買収計画に加担してしまう

「堅実そのものの人柄」であるはずの郷田が経営するフォックスですが、実は運用失敗によって、自主再建が困難なほどの巨額損失を出してしまっていたのです。

 

追い詰められた郷田は東京中央銀行に相談します。そこで救済相手として紹介されたのが、電脳雑伎集団でした。

 

表面上、フォックスがホワイトナイトとして東京スパイラルを買収し、その後、フォックスを電脳雑伎集団が買収する

 

という詐欺まがいの計画を受け入れてしまった郷田の

「私は臆病でした」

引用:ロスジェネの逆襲 本文より

という言葉に、追い詰められた人間の弱さを感じました。

 

 東京スパイラルからの逆買収

半沢が電脳雑技集団、東京中央銀行の計画を知ったあとの相関図は下のようになります。

ロスジェネの逆襲相関図2

半沢たちから提案を受けた東京スパイラルの瀬名は、郷田の経営するフォックスを逆買収する意向を発表します。

 

郷田は、あくまでも最初に救済の手を差し伸べてくれたのは電脳雑技集団の平山である、と東京スパイラルからの買収に反対し、スジを通そうとします。
しかし平山本人からは、フォックスに投資するメリットがないと切り捨てられ、結局は東京スパイラルからの買収提案を受け入れることになったのです。

 

最後に

若いころには積極経営で会社を大きくしていった郷田ですが、経営破綻の危機に瀕してから、東京スパイラルの買収提案を受け入れるまでは、ずっと保身の為に行動していたように思います。
年を取り、アイデアも枯渇したおっさんの悲哀を感じます。

 

僕自身も結婚し、子どもが生まれ、家を買い、おっさんになった今では、昔と比べると守りに入っているな、と感じることが多いので親近感が湧くのかもしれません。

 

こういう脇役の人物に注目しても楽しめる「ロスジェネの逆襲」一度読んでみてはいかがでしょうか。

 

*1:4月スタート予定でしたが、延期が発表されています